2020年04月18日:「100日後に死ぬワニ」の“可能であった生”について(1/3)

 2019年12月12日から、twitter上において投稿(連載)されていた四コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が、2020年3月20日をもって「100日目」に到達し、完結しました。

 投稿者は、漫画家のきくちゆうきさんであり、当初宣言したとおり、「100日後まで描」ききった、ことになります(このブログでも、連載が始まってすぐに「『100日後に死ぬワニ』の滑稽さと不気味さについて」というタイトルで、当該四コマ漫画を紹介しました。)。

 ……と、ここまでならば、このブログで取り立てて付け加えたいことは何もなかったのですが、この四コマ漫画が完結した後に一連の出来事が発生したために、完結とは別の意味でtwitter上の話題が盛り上がりました。

 その「出来事」とは何か? まず、完結して間もなく、きくちゆうきさんは、自身のTwitter上にYouTubeのリンクを貼りました。タイトルは、『「100日後に死ぬワニ」× いきものがかり「生きる」』であり、文字通り「100日後に死ぬワニ」の四コマ漫画と、いきものがかりの『生きる』というタイトルの楽曲とのコラボレーション動画となっています。

 このほか、「100日後に死ぬワニ」の公式アカウントが登場して、コラボグッズが販売されたり、四コマ漫画の書籍化が予定されたりしています。

 その一方で、「100日後に死ぬワニ」が完結したことの余韻に浸る間もなく、次から次へと商業展開がなされたことについて、居心地の悪さを覚えた人が、Twitter上には少なからずいるようでした。

 引用しておいてから付け足すのも奇妙な話(「初めから、引用するべきツイートをもっと厳選しろ」という意味で)ですが、本件については、「マーケティングの立役者が電通であったこと」が、Twitterにおける発信者の心象に大きく影響している様子が垣間見られます。

 「電通の行ったマーケティング手法の可否」については、本論の扱うところではありません。しかし、あえて何かを言うとすれば、「商業展開したこと」自体は、否定されるべきものではないのではないでしょうか。「100日後に死ぬワニ」がコンテンツとして優れているのは、これだけTwitter上の話題をさらっている状況を踏まえれば明らかなことですし、「自分の作り上げたコンテンツをどうするのか」についての裁量は、ひとえに作者であるきくちゆうきさんに存するためです。そもそもきくちゆうきさんは、自らのTwitterで、「100日後に死ぬワニ」のLINEスタンプを販売しています(https://twitter.com/yuukikikuchi/status/1225011208597565441)。「LINEスタンプはオッケーだけれど、その他の商業展開はNG」というのは、論が立たないのではないでしょうか。

 話が商業展開のところに行き過ぎてしまったので、軌道を元に戻しましょう。今回、この記事で特に注目したいことは、「『100日後に死ぬワニ』の生は、可能であったのか?」という点についてです。

続く

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