15.twitterを利用した宣伝に意味はあるのかについて

 前の章でも度々してきたとおり、「ブックマーク」や「評価」は、作品の面白さを判断する絶対的な基準にはなりえません。

 しかし、仮にそうであったとしても、ブックマークが10件であるよりかは100件の方がいいですし、評価ポイントも10ptであるよりかは100pt貰えたほうが嬉しいに決まっています。

 新規の読者を獲得する上で、宣伝は大きな役割を果たします。中には、「宣伝などは邪道だ」と考える人もいるかもしれません。確かに、宣伝に熱中しすぎるあまり、肝心の小説執筆がおろそかになってしまっている書き手はそれなりにいます。それに宣伝などをしなくとも読み手の注目を集めている作品は確かに存在します。

 ですが、もし宣伝をすることによって、人気作品が更なる人気作品になったら、それはそれで書き手にとって願ってもない幸運になるはずです。小説が無料で投稿できるように、宣伝も無料で、しかも大した手間を掛けずにできるのですから、利用してみるのも一つの手です。

 twitterを利用して自作品を宣伝している書き手の方は、一定数存在します。去年(2015年)の8月末に、そうした書き手を揺るがす事件が起きました。「ncode.syosetu.com」を含むツイートが、一時的に行なえなくなってしまったのです(『ncode.syosetu.comを含むツイートが行なえない問題について』、http://blog.syosetu.com/?itemid=1499、2016年2月13日閲覧)。

 翌日には復旧したのですが、およそ1日の間宣伝活動が行なえなかったために、多くの書き手が苦労していました。なぜ苦労するのか? それは「宣伝をしないとアクセスが伸びない」と多くのユーザが考えていたためです。

 では実際のところ、そのような宣伝ツイートにどの程度効果があるのでしょうか。このことについて検討してみましょう。『SimilarWeb(http://www.similarweb.com/)』というサイトでは、サイトのURLを入力することによって、アクセスを様々な視点から解析してくれます(無料です)。

 私が書いている、吹けば飛ぶような作品のURLは、残念ながらアクセス解析できませんでした(KASASAGIは偉大です)。そのため、ここでは小説家になろうそのものを解析にかけています。

 これがその結果(http://www.similarweb.com/website/syosetu.com、2016年2月13日閲覧)ですが、socialのところを見てもらえば分かるとおり、アクセスに占めるソーシャルネットワークの割合は1.80%に過ぎず、その中でtwitterが占める割合も半分を下回っています。ウェブサイト「小説家になろう」全体のアクセスのうち、twitterが果たしている役割はたったの0.9%にすぎないわけです。

 むろんこの結果はウェブサイト「小説家になろう」全体のアクセスを参照しているため、個々の作品を解析にかけてみれば、twitterが占める役割は大きなものになるのではないかと思います。ですがこのことから推測するに、宣伝ツイートを乱れ打ちしようが、更新のたびにツイッターで宣伝しようが、効用にはさしたる違いが無いのではないかと考えられます。

 ――と、このような考察を私がしたのが、騒動の直後のことになります。ところがその後、twitterにおける宣伝活動は、新たな局面を迎えるに至りました。自分のツイートに対してどのくらいのリアクションがあったのかということを、「アクティビティ機能」を通じて確認できるようになったためです。

――宣伝ツイートを乱れ打ちしようが、更新のたびにツイッターで宣伝しようが、効用にはさしたる違いが無いのではないかと考えられます。

 この解釈はまったく的外れでした。「さしたる違いがない」どころの話ではなく、「ほぼ効果がない」と言ったほうが妥当です。嘘だとお思いの方がいるのならば、自作品の宣伝ツイートのアクティビティを確認してください。エンゲージメントにおいて、「ツイート内のリンクが何回クリックされたか」ということを、インプレッションの総数から比較すれば、微々たるものに過ぎないということがはっきりするはずです。

 私としては、「アクセスのうち、twitterが果たしている役割はたったの0.9%にすぎない」という主張が、経験的に立証されたために嬉しいのですが、多くのユーザにとっては不都合な結果だと思います。一生懸命宣伝しているにも関わらず、リンクが踏まれる可能性は低い。宣伝されるとアクセスが伸びるのは、単純にtwitter内のクローラ(URLを巡回するアルゴリズム)が作動しているに過ぎないわけです。

 では果たして、「小説家になろう」のユーザがtwitterを利用することは無意味なのかと言えば、そんなことはありません。宣伝をオートツイートに任せきっているユーザは別として、大方のユーザはアカウントを利用し、他作者との交流をはかっています(これを「交流」ではなくて「馴れ合い」だ、と批判している辛辣な人もたまにいますが、それは社会性を著しく欠いた意見です)。

 「小説家になろう」上では出会うことなど思いもよらなかったユーザの方と知り合えたりするため、twitterの効用は計り知れないものと思います。

 いずれにしても私は、twitterをやること自体には、計り知れない意義があると思っています。宣伝目的でtwitterをやるよりは、普段ならば出会えなかっただろう多様なユーザと繫がることが重要だと私は考えます。

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