16.twitterのアンケート機能で、自作品の今後を決めてしまっていいのか

 twitter、あるいはtwitterに限らず他のSNSでも、宣伝をする以上に繫がりを大事にすべきだということは、前回確認できたものと思います。

 まず、ユーザの人となりは、SNSの方が分かりやすいです。活動報告はほとんど書かなくとも、ツイートならば頻繁に行なっている、というユーザは多くいます。第3章でも指摘したとおり、書き手の素性が分かっているのと分かっていないのとでは、読み手の負担もそれなりに変わります。他愛のないことであっても、自分の情報を発信することは、それなりに意味のあることです。

 これから述べる話題は、ほとんどtwitterに関する事柄に限定されます。

 Twitterに投票機能が実装されたのは、去年の10月頃になります。初めは二者択一式の質問しかできなかったのですが、現在は選択肢を追加することが可能となり、アンケートのように利用することができるようになりました。

 この機能を利用して、自分の創作のあり方についてアンケートをするユーザはそれなりにいるでしょう。もちろん「構ってほしい」くらいの理由でアンケートを作る人もいるでしょうが(twitter側の意図を考えるかぎりでは、おそらくそのような使い方で正しいと思います)、中には「今後、私はどのような作品を書けばよいですか」などという、迫真の質問をしてくるユーザも存在します。

 世の中に、ただより高いものはありません。それはtwitterのアンケートであっても同じです。Twitterのアンケートで集めたデータが本当に役に立つのかどうか、仮に役立たないとしたら、どうすれば役立つようなアンケートに仕上がるのだろうかということについて、少し考えてみましょう。

 ある作者が、自作の結末について悩んでいたとします。今作者の頭の中には、ハッピーエンドに向かうA案と、バッドエンドに向かうB案とが描かれています。作者としてはいずれも魅力的な結末ですが、人に読ませるものである以上、できるかぎり多くの人が納得できるような結末にしたいと考えてみます。

 そこで作者はtwitterの投票機能を使うことにしました。訊くことは簡単です。「私の書いている小説の結末は、ハッピーエンドがいいですか、それともバットエンドがいいですか」という具合です。

 上記の質問に対し、懇意のフォロワーのべ19人が解答してくれました。このうち、「ハッピーエンド」を選んだのは11人、「バッドエンド」を選んだのは8人でした。作者はこのデータを参考にして、ハッピーエンドの結末を採用します。

 さて、この作者がハッピーエンドを採用したのは、本当に正しい結論だったでしょうか。このことを考えてみましょう。19人の回答者のうち、ハッピーエンドを選んだのは11人ですから、比率としては11/19 = 0.56、56%にあたります。当たり前ですが、このときは平均E(X) = np = 11となります。

 次に、分散を求めてみると、V(X) = np(1-p) = 11 * (8/19) = 4.631… となります。よって標準偏差√V(X)は±2.15…。要するに、アンケートの結果としては11人が「ハッピーエンド」を選んでいますが、実際のところは9人から13人までの振れ幅がある、というわけです。誤差がプラスの方に振れてくれた場合ならば、ハッピーエンドの選択も誤りではありません。しかし仮に誤差がマイナスに振れていた場合、アンケートをした意味はほとんどなかったといっても良いでしょう。

 アンケートにそれなりの効力を期待したいのならば、誤差はできるかぎり小さくしなくてはなりません。誤差を小さくするための方法は様々ですが、この場合は回答者の人数を増やす以外に選択肢はありません。誤差を10%以内に収めたい場合は、最低でも25人の回答者が必要です(ちなみに、誤差を5%以内にしたい場合は、100人以上の回答者が必要です。こうなるともはや現実的な数字ではありません)。

 問題はそれだけにとどまりません。仮に25人の回答者が集まったとしても、いったいそのうちの何人が本当に信頼のおける回答者でしょうか。Twitterのアカウントは、いくらでも作ることができます。まずありえないとは思いますが、25人全員が同じ人物だった場合、そのアンケートには当然何の意味もありません。

 以上のことから、twitterのアドバイスを鵜呑みにすることにはそれなりのリスクが伴うことは明らかになったと思います。不特定多数の人に訊こうと努力して迷走するよりは、数人の信頼できるユーザに対して質問メッセージを送った方が、はるかに有意義な回答が得られるものと思います。

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