7.3.付価錬成

 「錬成」の双方向性については前回に確認いたしました。今回も引き続き「錬成」の価値に注目して考察を進めてゆきたいと思います。前回の「等価錬成」においては、左辺と右辺の物質的価値が等価のまま反応する、という可能性を示唆しました。今回は左辺と右辺の物質的価値が、「魔法」の介入によって大きく変化する「付価錬成(“付加”ではありません)」について考察してみたいと思います。

 まずは「付価錬成」のモデルを提示しましょう。

物質A + 物質B ⇒(魔法による反応)⇒ 物質C’

 というモデルです。このモデル自体は、「等価錬成」における第一のモデルとさして変化する箇所はありません。

 では、この物質C’が物質Aおよび物質Bに分解する、第二のモデルを確認してみましょう。

物質C’ ⇒(魔法による反応)⇒ 物質A + 物質B + 魔法の効力E

 この「付価練成」における最大の特徴は、反応自体は双方向にもかかわらず、結果は非対称になるということです。また「付価錬成」の場合、第二のモデルには「魔法の効力E」が添加されます。これは反応を促進させるために作用させた「魔法」が、物質C’を分解する過程で効力として発現したものと考えることで説明がつきます。

 当然魔法の行使者の魔力が「魔法の効力E」として発現しただけですので、厳密には価値が付随したことにはなりません(魔法使いをアクターとしてしまえば、この「付価練成」も「等価錬成」の亜種と見なすことができるからです)。しかしながら、物質同士の「化合」、「分解」という原義だけで見れば、本来の「化学反応」以上の効力をこの「付価錬成」は生み出す可能性を示唆しています(魔法の効力として「熱」が存在すれば、爆弾・着火剤の代替となりうるような物質C’を生成することができます)。

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