「錬成」と「科学」――それぞれをどう折衷させるのかという問題については、書き手の裁量に任せるべき問題ですので、ここではとくに追及したりしません。そしておそらく、よほど突飛な設定を想定しない以上は、「錬成」と「科学」が相互に矛盾しあう可能性はあまり存在しないように思われます。
次に取り扱うのは、錬成そのものに付随する「価値」をどのように判断するのかといった問題です。
ややとっつきにくい問題ですので、またモデルを引き合いに出して考察を進めていきましょう。前回は「錬成」を、
物質A + 物質B ⇒(魔法による反応)⇒ 物質C
というモデルで示しました。そしてこのモデルはとりもなおさず
物質C ⇒(魔法による反応)⇒ 物質A + 物質B
となる可能性をも暗示しております。化学における「酸化」と「還元」の双方向性が、魔法によって促進されるということになります。
これ以降は、この双方向モデルを「等価錬成」と称したいと思います。それは両モデルにおいて、左辺と右辺とが等価のまま反応が形成されているからです。
また、このときの「魔法」は、やはり単なる反応促進作用を担っているにすぎません。そうなると、この「等価錬成」はもはや「科学(化学)法則」の一形態に分類してしまった方がよいかもしれません。