「アースラ、しっかりして!」
剣を放り投げると、エリジャは倒れているアースラのところまで駆け寄った。サウルの剣に刺し貫かれたというのに、アースラの傷はすでに癒えていた。アースラは目を閉じていたが、死んでいるのか、生きているのか、エリジャには分からなかった。
「アースラ、返事を――」
言い終わらない側から、強烈な振動に揺さぶられ、エリジャは体勢を崩した。王宮全体が斜めに傾き、心なしかエリジャは自分の身体が浮いているような感覚を味わった。
(落下している――?)
サウルの生首が床を転がっていき、他の死体に混ざって見えなくなる。サウルが死んでしまった今、浮遊の魔力から解き放たれた王宮が、地面へと落下しているのだ。
(行かないと……!)
サウルの胴体に絡まっていた鍵を掴むと、エリジャはやっとの思いで立ち上がった。今はオルタンスを助けなければならない。
「待ってて――」
そう呟くと、エリジャは北東の塔めがけて一目散に駆け出した。