名を呼ばれてすぐ、エリジャは稲妻に撃たれたかのようになった。そして、自分自身でもどうしてそうするのか分からないまま、息を殺し、エリジャは背後に振り返った。
「アースラ……?」
そこには、三年前に命を落としたはずの親友・アースラの姿があった。後ろで一房に束ねられた真珠色の長い髪、金色の瞳、尖った顎――アースラに間違いなかった。
「お懐かしゅうございます……」
アースラが声を詰まらせる。そのときにはもう、エリジャはたまらなくなって、アースラのことを抱きしめていた。
「アースラ……!」
「ああ、エリジャ様……」
しばらくの間、エリジャとアースラはお互いに抱き合っていた。
「アースラ、本当にあなたなのね……」
アースラから離れると、エリジャは目元をぬぐう。
「でも、どうして? あのとき、てっきり死んだものとばかり……」
「親切な隊商に目を掛けてもらい、命を助けられました」
エリジャの疑問に対し、アースラはよどみなく答える。
「……ヂョゼの餌食にならなかったのは幸いです」
「フフフ、そうね」
アースラの言いぐさが面白かったので、エリジャは思わず吹き出してしまった。
「むしろ、あなたが死ななくて済むように、ヂョゼが隊商を導いてくれたのかもね。……どうしたの、アースラ? 顔色が悪いわよ?」
「いえ……そのようなことは……」
アースラは唇を引き結ぶと、視線を落とした。アースラは取り繕っているが、その顔色が悪いことなど、エリジャにはお見通しだった。
とは言うものの、どこが具体的に悪いのか、エリジャははっきりと見抜けなかった。エリジャの目からは、アースラはどことなく影を帯びているように映った。
「とにかく、エリジャ様。エリジャ様に会わせたい方がおります」
「私に……?」
「ええ」
アースラの真剣なまなざしを受け、エリジャは黙ったまま一度、頷いてみせた。