第102話:エピローグ②:主要登場人物たちのその後

ヨショウ・ヒスイ

 勇者の娘として、竜の娘として、自らの責務を果たすべく、新しい国づくりに着手する。

 南滄の国号を復活させた上で、先代の鑽をはばかり、“錘”と名乗るようになる。

 彼女の下で王国は急速に発展を遂げるが、辺境での戦争も増え、その度にヒスイは親征を行った。

 建国から二十七年後のある日、国境付近の陰淮滅里エンワイメスリという地で交戦の際、彼女は右足に矢を受けて負傷する。北部の湿地特有の瘴気に体を苛まれ、ついに髄膜炎を発症して死に至る。

 親征軍は一時退却を試みるも、敵からの追撃に応戦する際に、亡骸を紛失してしまう。結局亡骸のないまま葬儀が営まれ、南滄は新しい国師を迎えることとなる。

エバ・カリポリス

 ヒスイの友として、ヒスイを支えるようになる。自らの魔術の才をいかんなく発揮して、クライン導師も成し遂げられなかった属性魔術の体系化に成功。南滄王国が魔法大国化する礎を築くことになる。

 しかしヒスイが辺境で死亡して以降は、情緒にきたしていた異常気質が表面化する。あるとき偶然見かけた指の欠けた子供を、ヒスイの生まれ変わりと盲信。その子を新たな国師にしようと躍起になり、イェンやロイ、セフと鋭く対立するようになる。イェンとロイを王都から追放し、彼らに付き従う支持者達を公職から罷免。予章宮に参内したイェンの弟子・エフを捕らえ幽閉した挙げ句、セフも軟禁しようとするなど、昔の彼女からは想像もつかないほどに強権的な行為を行い、一時権力を独占した。

 建国から三十年目のある日。独裁者になりかけたエバは、彼女を恐れる反動派の手により惨殺される。全身に矢を穿たれ、一直線に袈裟懸けにされて仕留められたという。勇者の親友という肩書きにありながら、その最期はあまりにもむごかったため、今日でも悲劇として語り継がれている。

サンゴジュ・セフ

 ヒスイの友として、ヒスイを支えるようになる。恵まれぬ子弟が十分な養育を受けられるよう、救貧院を設立し、自ら剣術を教えるようになる。

 なんだかんだあって、結局ロイと結婚。五人の子供をもうける。うち末娘であった慈雨ジウはイェンの一番弟子・ハイエフと婚約する。

 ヒスイの死亡後は、イェンやロイと同じように、エフを臨時の国師とすることに賛成する。が、これをめぐりエバと鋭く対立するようになる。関係を修復しようとするもままならず、エバは殺されてしまう。

 エバが殺されて以降、セフが救貧院で剣を握ることはなかったという。それゆえ、エバを切り裂いたのはセフなのではないかという憶測が入り乱れたが、真相は定かでない。

 建国から七十年後、夫・ロイの後を追うようにして亡くなった。エフはセフの死を深く悼み、彼女に「国母」の称号を贈った。

ハイ・イェン

 ヒスイの遠征に付き従い、西部へと旅立った際に、自分と同じく角の生えた人、尻尾の生えた人、果てはウサギのような耳の生えた人を発見し、ヒスイに頼み込んで彼らを王都の郊外へ招き入れる。

 その後、そうした若者たちを、自らの後継として育てるようになる。特に一番弟子のハイエフはヒスイにも大変気に入られた。

 ヒスイの行方不明後は、エフを次期国師とする派閥に賛同するが、エバに妬まれて王国を追放される。エバの死後に復帰するが、波乱に嫌気がさし、王都の片隅に引きこもって悠々自適の生活を送る。

 建国から三十三年目に死去した。イスイの予言通り、その日はちょうど百二十歳の誕生日だったという。亡骸は丁重に葬られた上で、エフとロイにより「国叔」の称号を贈られた。

レ・ロイ

 ヒスイの即位後、その洞察力を高く評価され、イェンとともに王国の中枢で活躍する。

 ハイエフの類い希なる才能を見抜いたのもロイであり、エフに様々なことを指導するようになる。

 なんだかんだあって、結局セフと結婚。周囲から水と油だと思われていたにもかかわらず、意外にも仲睦まじく生活を共にする。

 ヒスイの行方不明後は、次期国師を誰にするかで、エバと対立するようになる。一時はエバに王都を追放され各地を転々とするも、エバの惨殺後に王都へ復帰。その後はエフのパートナーとして国政に参加する。

 建国から七十年後のある日、その生涯を閉じた。エフはロイの死を深く悼み、彼に「国父」の称号を贈った。

 ハイエフ慈雨ジウ、二人の間には子供が産まれる。後に二人の子孫はヒスイの姓である【予章氏】を名乗り、南滄王国(後に真滄帝国)の皇帝一族となってゆく。

 またイェンの残りの舎弟四人と、ロイ・セフの残りの子供四人は、それぞれ娶ったり嫁いだりして、真滄帝国の最有力貴族層を形成してゆく。

ヨショウ・イスイ

 決戦の後、彼女の姿を見たものはいない。ヒスイが取りつかれたように遠征を行ったのも、一説にはイスイを探すためだったのではないかと言われているが、真相は定かではない。

カケイ

 いずこへ消え去ったのか、いつしか誰も、カケイのことを話題に出さなくなっていた。今もタミンと共に、銀台の庵で生活をしているのだろうか。

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