6.1.壺

 前回の「刺青術」から、文様を利用して派生する各種の魔術について考察を進めております。この第六講では、文様から派生しうる各種の「呪具(アイテム、もしくはある目的に特化した魔術)」について考察を進めてゆこうと思います。

 今回私が取り上げる呪具は、合計で六種類あります。それらは「壺」、「杖(狭義)」、「仮面」、「織布」、「呪符」そして「魔罠」です(筆者の想像力ではここまでが限界ですので、何かほかに考えつくものがあったらお知らせください)。

 まずは「壺」から。この場合の壺とは、別に必ずしも壺の形状を有している必要はありません。もっと広義の意味に捉え、“容器”と言いなおしてもいいかもしれません。ですがそれだと趣きに欠けるような気もします。

 私見はさておき、「壺」という呪具に文様が関わるとき、その効力はどのようなものがあるでしょうか。もっとも古典的な発想としては、「壺に入れた水がたちどころにして酒に変わる」などというものがあるかもしれません。

 「壺の中へものを投入すると、それがさまざまな効力を伴うようになる」というのが、もっぱらな「壺」の役目ではないかと推測されます。

 では、「壺」と「文様」はこの場合どのような状態におかれるのでしょうか。おそらくは、壺の底にあたる部分に文様が施されるのではないか、と考えられます。文様の施される場所が壺の外側ではなく、内側であるという点に関しては疑問の余地はないと思います(内側に文様を描かないと、壺の中身に効力は発動しないからです)。

「内側ならば文様はどこに描かれてもよいはず。それなのに、どうして“底”に限定されるのか?」

 と、考える方がいるかもしれません。その通り、特に“底”に限定する必要はありません。ありませんがしかし、作品内の時代的設定などを配慮すると、文様は底に描かれていた方が無難だと思います(一度作った容器の内側面に、文様を描くのは至難の業だからです)。

 「壺」における“質”と“媒”はどのような特徴を帯びるでしょうか。このことについて考えてゆきましょう。

 まずは“質”について。これについては単純に、「文様を描いたときに利用した素材」にすればよいと考えます。釉薬(うわぐすり)でも油性インキでもよいでしょう。

 次に“媒”について。この場合の“媒”は「壺」ではなく、「壺に投入されたアイテム」に変更されることに注意してください。この点で「壺」は、魔術の発動について実にユニークな特徴を帯びてくるでしょう。

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