2.1.2.口唱呪文の言語は、複雑でなくてはならない

「魔法を唱える際には、特殊な言葉を用いたほうが書き手にとって便利である」――このことは、前回に確認しました。

 ここからは、更に詳しい言語設定をしたい人のための項目です。

 まずはじめに、

「魔法言語は、必然的に常用語(和製ファンタジー世界の住民たちが日常的に利用する語)の言語体系より複雑になる。もしくは、常用語とは全く違った言語体系になる」

 ということを理解しなくてはなりません。

 これはなぜか? ――前回にも指摘したとおり、魔法言語は魔法学校で教えられるべき言語です。裏を返せば、誰にでも呪文を理解されてしまうと困ることになります。部外者にノウハウを簡単に奪われてしまうことは、なんとしても避けたいはず。したがって、魔法言語は真似しにくいものであったほうが理想的なのです。

 では、実際にどんな様式が理想でしょうか。和製ファンタジーの書き手が日本人であると見なして、考えてみましょう。

 日本語はウラル・アルタイ語族であるため、言語体系の全く違う語族としてインド・ヨーロッパ語族の言語を利用するのが理想でしょう。

 しかし、実際にどうすればいいのか。東洋の言語と西洋の言語におけるおおざっぱな違いは、子音に対する母音の比率から判定できます。東洋の言語では、子音と母音の比率はおよそ同じくらいになりますが、西洋の言語では、母音より子音はやや多めになっています。

 ですから、西洋の言語で一番なじみのある言語を選択して、母音をてきとうに混ぜ加えてあげれば、即席で魔法言語が作られます。

 更に、西洋ヨーロッパ世界の言語の特徴を、頻度分析から考えてみましょう。

 英語を例にとれば、英語のアルファベットで頻出のものは順に、「e」、「t」そして「a」となります。

 ですから、これらのアルファベットを抜き取り、他の使用頻度の低いアルファベットに置き換えれば、あっという間に魔法言語を作ることが可能です。

 以上のことから、書き手は「魔法言語が複雑であること」を念頭に置いた設定作りが要求されます。

▶ 次のページに進む

▶ 前のページに戻る

▶ 『和製ファンタジーにおける「魔法」の設定について』に戻る

▶ エッセイ等一覧に戻る

▶ ホームに戻る

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする