1.はじめに

 私が『「小説家になろう」におけるブックマーク・評価等についての考察(註:旧題は『「小説家になろう」における、ブックマークや評価についての考察』)』を投稿してから、およそ1年の歳月が経過しました。

 この間に、「小説家になろう」をめぐる様々な状況は、刻々と変化を遂げていきました。もっとも、当初問題として提起した「ブックマーク」、「評価」についての考察は、今でも十分読み手の皆さまに資する内容を含んでいるのではないかと筆者は考えています。

 しかし「テンプレート」の項目は、この一年の間に相当の変容をきたしました。あるいは少なくとも、「テンプレ小説」に対する私の解釈の仕方は相当変わりました。

 加えて、この4月には「小説家になろう」の運営により、ジャンルそのものが変更にさらされることになっています。この変更が何をもたらすのか、あるいはそもそも何ももたらさないのかについてもまた、検討しなくてはなりません。その際に考慮しなくてはならないのが、KADOKAWA+はてなの両者によって新たに設立された小説投稿サイト「カクヨム」との関係です。

――……

 このように様々な問題を検討するにあたって、筆者のアプローチ方法もまた、著しい変更を余儀なくされました。

 このエッセイを投稿する際、他の「小説家になろう」分析と差異化する目的で、筆者はできるかぎり数理・統計といった定量的な面からの分析を行おうとしていました。

 このようなアプローチ方法は、たとえばブックマークの問題を考えたり、評価の在り方について考察したりする上では、それなりに有効だったと思います。

 しかし、この一年の間に私自身が経験したことから、「数字だけではどうしても説明しきれない面が数多くある」ということに(遅ればせながら)気づくようになりました。私事になってしまうのでここら辺の事情は割愛しますが、いずれにしてもこの【第二版】においては、【第一版】ではできなかった「定性的」な面も踏まえて考察していきたいと思います。

 むろん、「定性的」なものを分析しようとすると、どうしても物の見方にバイアスが掛かってしまいます。これは避けることのできない宿命であり、何人もそこから自由になることはありません。しかし、逃れようと努力した人々の叡智は、世の中に様々な形で結実しています。そうした知見を踏まえつつ、解決するのに難しい問題についても今回は踏み込んでいきたいと考えております。

 全ての人に受け入れられる内容ではないということは、十分に承知しています。しかし、どのような内容の創作物であっても、読む前と読んだ後とでは、何かしらが変わった、あるいはもっと積極的に言えば「前に進めた」と言えるような創作を志すべきではないか、と私は考えています。もちろんこのエッセイがどのくらいそれに資する内容かは分かりかねますが、このエッセイを読んだ皆さまのお役に立てるのならばさいわいです。

【改訂にあたって】

・第一章「ブックマーク」、第二章「評価」の項目については、論旨に大幅な変更はありません。

・第三章「テンプレ小説」については、アプローチの方法を定性的なものに変更いたしました。

・新たに第四章「小説のPR」という項目を作成しました。これは「実践的なPR方法の考察」というわけではなく、「PRするにあたって注意すべきことの考察」となっています。あらかじめご了承ください。

・新たに第五章「ジャンル」という項目を作成しました。主に「『小説家になろう』で実施されるジャンル変更がどのような効果をもたらすのか」ということと、「『カクヨム』がどのような傾向を有するサイトになるのか」ということについて触れています。

・いくつかの例は、より直感的に把握可能で、かつ示唆に富むものに変更いたしました。

・旧版における補論は、正確性を欠く内容が多かったこと、創作論に近い話となってしまったことから、省略させていただきました。あらかじめご了承ください。

▶ 次のページに進む

▶ 『「小説家になろう」におけるブックマーク・評価等の考察について』に戻る

▶ エッセイ等一覧に戻る

▶ ホームに戻る

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする