SFやちょっとしたファンタジーでおなじみの多元宇宙論は、魔法の設定について考察するうえでも大変参考になります。
今回の問題に際して、宇宙が多元的になりうる場面というのは、「魔法使いが魔法を発動する」まさにその瞬間です。これまでの考察のとおり、もし魔法が個人の主観的な現象であり、客観的な対象物に働きうるのか否かが究極的には分からない場合には、未来は「魔法使いの魔法が通用しなかった世界」と「魔法使いの魔法が通用する世界」の2種類に分岐することとなります。
むろん、多元宇宙説をもって魔法を論じることは、メタ的な解決ではありますが、世界観内における難題を解消していることにはなりません。なぜなら「魔法使いの魔法が通用しなかった世界」と「魔法使いの魔法が通用する世界」の2種類が同様に確からしく並んでおり、作品を作り出す作者が「魔法使いの魔法が通用する世界」のみを選び取って物語っていることになっているためです。作中に登場するはずだった神の代役を作者が果たしているといえば健全なのかもしれませんが、これは問題の解決というよりかは、むしろ留保・凍結といった方が正しいかもしれません。