3.3.2.「封印」と「結界」は原理が同じであること

 これまでは「文様」の原初的な問題を取り扱ってきました。特に前回はあらゆる「文様」の効力を失わせる方法として、「質媒検索」という概念を取り入れました。「文様の効果」、「魔術質」そして「魔術媒」を数値化することによって、魔術質の効率的な解読と効果的な削除が可能になるのです。

 こうした質媒検索の手法が封印・結界の解除で役に立つことは、前回の例を確認してみれば一目瞭然でしょう。

 今回は改めて、では「封印」、「結界」とはそもそも何なのか、ということを考えてみたいと思います。

 封印、結界についてわざわざ説明するのも野暮な気がしますが、ここでは共通の認識として、封印、結界を定義してみましょう。

 まずは封印について。言葉だけ聞けば大仰ですが、簡潔な意味としては要するに「鍵をかける」ということと同義と捉えてしまってもよいのではないでしょうか。手紙に封をすることも、第三者に中身を見られないために施す「封印」の一種ですし、金庫の存在も、第三者に価値あるものを盗まれないようにするための「封印」と捉えることができます。

 したがって「封印」とは「ある人物Aが排他的所有権を持つ(あるいは持ちたいと考えている)あるアイテムXを、悪意ある第三者Bから守るために施すなにかしらの工夫」と考えることができそうです。

 では「結界」はどうでしょうか。――現実世界で結界を張り巡らしている人間を、残念なことに私は目撃したことがありませんし、これから先の人生でも目撃したいとは思いません。厨二病罹患者がごくまれに結界を張るそうですが、実際的な効力は薄いものと思います。こうしたことから鑑みても、「結界」はファンタジー世界に特有の産物であるようです。

 よくある「結界」の設定としては、「魔法使いが張った結界には味方のみが逃げ込むことが可能であり、敵は寄せ付けられない」といったものがあげられます(「結界」をどのように「張る」のかは、ここでは追及しません)。おおむね「結界」の定義も、この事例に当てはめて考えてしまってもよいでしょう。

 すると「結界」とは「ある人物Aが保護したいと思っているある対象Yを、Aの保護下から解き放ちたいと考える存在Bから守るための、何がしかの手立て」と考えることができそうです。

 ここまでを振り返って考えてみると、どうも「封印」と「結界」は、保護すべき対象の性質が異なるだけで、同じことを述べているようです。

 以上のことから、「封印」と「結界」は同質のものであると見なして、今後は話を進めてゆきたいと思います。

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